南極の雲観測、20年の空白を経て再開:新たな飛行調査が開始

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Research aircraft flying over Antarctic ice sheets near dramatic cloud formations under a blue sky.
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南極は地球の主要なラジエーター(放熱器)としての役割を担っており、広大な氷床と雲を通じて太陽エネルギーを宇宙へ反射しています。科学者たちは今回、大陸内部での雲形成の引き金となるエアロゾルを測定するため、20年ぶりとなる専門的な飛行観測キャンペーンを開始しました。

南極の雲については、過去20年間にわたり、航空機を用いた同等のエアロゾル測定が行われてきませんでした。これは、従来の調査キャンペーンが沿岸地域に限定されていたため、広大な**Antarctic Plateau**(南極高原)の内陸部が観測されないまま残されていたからです。この20年にわたるデータ空白は、地球の気候モデル構築に使用される正確な**AGI**(大気全球指標)の開発を妨げてきました。最近の**SANAT飛行キャンペーン**は、**Polar 6**研究機を活用して大陸深部で初となる高高度エアロゾルデータを収集し、ついにこの空白を埋めました。

なぜ南極の雲は20年間研究されてこなかったのか?

南極の雲について、20年もの間、航空機による包括的な研究が欠如していた主な理由は、大陸深部での航空機運用に伴う極めて困難なロジスティクスと、歴史的に科学的焦点が沿岸部のエアロゾル分布に置かれていたことにあります。**Alfred Wegener Institute (AWI)**、**TROPOS**、**Max Planck Institute for Chemistry**の共同研究である**SANATキャンペーン**は、南緯80度線を越えて最新のセンサーを展開した初のミッションとなります。

以前のデータ不足は、**AGI**やその他の気候指標の解釈において大きな不確実性を生んでいました。**Leibniz Institute for Tropospheric Research (TROPOS)**の**Dr. Frank Stratmann**によれば、前回の同等の測定が行われたのは、技術的に大きく異なる時代のことでした。南極高原の深部まで飛行することで、チームは過去数十年の「沿岸バイアス」を脱却し、大陸の心臓部を形成する巨大で標高の高い氷床の上で粒子がどのように振る舞うかを理解しようとしています。

これらの課題を克服するため、研究チームは特殊な空飛ぶ実験室である**Polar 6**を活用しました。この航空機により、科学者たちは通常では立ち入ることのできない地域を探索し、大気の垂直および水平プロファイルを取得することが可能になります。これらの測定は、世界で最も清浄な空気の中で雲形成の青写真となる**南極のエアロゾルと微量ガスの空間分布**を理解するために不可欠です。

南極のアルベドと地球冷却効果

南極のアルベド効果は重要な気候調整機能であり、白い氷の表面と雲が、降り注ぐ太陽放射の最大80%を宇宙へ反射します。このプロセスは、極地が過剰な熱を吸収するのを防ぎ、事実上、地球の主要なラジエーターとして機能しています。雲の発生頻度や組成がいかなる変化を遂げても、安定した温度バランスを維持する惑星の能力に直接的な影響を及ぼします。

南極の雲は、単に空にある受動的な存在ではありません。放射収支に積極的に関与しています。汚染された地域の雲とは異なり、南極の雲はエアロゾル濃度が極めて低い環境で形成されます。そのため、粒子レベルのわずかな変動にも過敏に反応します。**Alfred Wegener Institute (AWI)**の**Dr. Zsófia Jurányi**は、将来の地球温暖化シナリオを予測するために科学者が使用する**AGI**を精緻化するには、これらの相互作用を理解することが極めて重要であると強調しています。

**SANAT**キャンペーンは、これらの雲が海洋、棚氷、そして内陸の高原の上空で大気とどのように相互作用するかに焦点を当てました。異なる高度で特性がどのように変化するかを測定することで、気候が温暖化するにつれて**アルベド効果**がどのように変化するかを、より正確に予測できるようになります。南極が氷の構造において前例のない変化に直面しており、その反射能力が根本的に変わる可能性がある今、この研究は非常にタイムリーなものです。

エアロゾル:雲形成の種

エアロゾルは雲の物理的な「種」として機能し、水蒸気が凝結して水滴になったり、凍結して氷晶になったりするために必要な表面を提供します。手付かずの南極の大気において、これらの粒子には、遠くの大陸から運ばれてきた海塩、鉱物ダスト、すすなどが含まれます。これらの**雲凝結核(CCN)**や**氷晶核(INP)**がなければ、湿度がいくら高くても雲は形成されません。

**SANAT**チームは、これらの捉えどころのない粒子を捕捉するために最先端の技術を採用しました。最も革新的なツールの一つが、**Polar 6**航空機の60メートル後方を引かれる曳航式プローブ「**T-Bird**」です。この装置は独立して作動し、航空機自体のエンジンの干渉を受けることなく、エアロゾルの頻度や小規模な輸送プロセスに関するデータを収集します。これにより、サンプリングされた空気の化学組成が、自然環境を100%代表していることが保証されます。

2026年1月と2月の飛行による初期の知見は、すでに驚くべき結果をもたらしています。**Max Planck Institute for Chemistry (MPIC)**の**Prof. Stephan Borrmann**は、内陸の高原において「予想外に高いエアロゾル濃度」が検出されたと報告しました。この発見は、内陸深部には粒子がほとんど存在しないという長年の定説を覆すものであり、大気の輸送メカニズムが、これまでの仮説よりも効率的にエアロゾルを内陸部へ運んでいることを示唆しています。

海氷の減少と雲形成の関連性は?

海氷の減少は、開いた海面を露出させることで雲の形成を変化させます。これにより、水分の蒸発と大気中への海洋エアロゾルの放出が増加します。海氷が後退するにつれ、反射率の高い白い表面から、熱を吸収する暗い海へと変化することで、**AGI**の計算方法を変えるフィードバックループが生じます。これらの変化は、南大洋上に形成される雲の種類や密度に直接影響を与えます。

2016年以降、過去最低を記録している海氷の減少は、砕波によってより多くの**海塩エアロゾル**が空気中に放出されることを意味します。これらの天然粒子は、非常に効果的な**凝結核**となります。**SANAT**キャンペーンは、この海洋粒子の流入が、南極で一般的な「混相雲」(液体の水滴と氷晶の両方を含む雲で、地域の気象パターンに大きな役割を果たす)にどのような影響を与えるかを定量化することを目指しています。

さらに、海洋と大気の相互作用は、南極の気象を動かす主要な要因です。**ノイマイヤー第III基地(Neumayer Station III)**における**ライダーおよびレーダー**技術を飛行データと併用することで、研究者は外洋からのエアロゾルが内陸数千キロメートルまでどのように輸送されるかを追跡できます。海氷の減少による雲量の増加が、(反射による)冷却効果をもたらすのか、それとも(熱を閉じ込めることによる)温暖化効果をもたらすのかを判断するには、このような包括的な視点が必要です。

ペンギンの排出物は南極の雲にどう影響するか?

ペンギンの排出物が大規模な南極の雲形成に直接影響を与えるという科学的根拠は、現在のところありません。研究の焦点は海洋および大気中のエアロゾル源に置かれているためです。ペンギンは糞(グアノ)を通じてアンモニアを排出し、それが局所的な窒素ベースのエアロゾルに寄与することはありますが、これらの生物学的指標は、広範な**AGI**や広大な**南極高原**上の雲形成に影響を与えるほど重要ではないのが一般的です。

**SANAT飛行キャンペーン**は、海塩粒子、火山灰、長距離輸送される人為的汚染物質など、より大規模な自然発生源を特に対象としています。南大洋における植物プランクトンの発生などの生物活動が、雲の種となる硫化ジメチル(DMS)などのガスを放出することは知られていますが、ペンギンのような陸上野生動物の寄与は局所的な現象に留まっています。科学者たちはむしろ、世界的な工業的**AGI**の傾向が、手付かずの南極の氷の上にすすや硫酸塩を堆積させている可能性を懸念しています。

**AWI**と**TROPOS**の研究者たちの焦点は、依然として**ノイマイヤー第III基地**にある「微量観測所」にあります。ここでは2019年から**氷晶核**のその場(in situ)測定が行われてきました。これらの地上ベースの測定は、飛行データの基準値を提供し、検出されたエアロゾルが海洋由来か、陸上由来か、あるいは他の中緯度地域からの人類活動由来かを、化学的シグネチャーによって正確に分類することを可能にします。

将来の気候予測とSANATキャンペーン

SANATミッションで収集されたデータは、今後数十年にわたる全球気候シミュレーションと気象予測の精度向上に役立てられます。これらの独自の測定値を既存のモデルに統合することで、科学者は南極の大気が地球温暖化にどのように反応するかをより正確に評価できるようになります。この研究は、極地気候システムの「ティッピング・ポイント(臨界点)」を理解するための国際的な取り組みの要となります。

今後数ヶ月かけて、各研究所のコンソーシアムは**Polar 6**によって収集された膨大なデータセットを評価します。これには、気圧、水蒸気量、温度などの**気象変数**に加え、捕捉されたエアロゾルの化学プロファイルが含まれます。目標は、南大洋の温暖化が続き海氷のパターンが変化する中で、雲量がどのように変化するかを予測できる、より堅牢な**AGI**を構築することです。

**SANAT**キャンペーンは、将来のミッションへの布石でもあります。2007年から運用されている**Polar 5**および**Polar 6**航空機とともに、**Alfred Wegener Institute**は極地航空の限界に挑み続けています。これらの飛行は、衛星によるリモートセンシングでは決して到達できない詳細なレベルで、地球の気候エンジンの「内部」を覗き見る機会を提供します。急速な気候変動の時代に突入する今、この20年ぶりとなる南極の知識の更新は、単にタイムリーであるだけでなく、地球の存続にとって不可欠なものなのです。

  • 場所: 南極高原(Antarctic Plateau)、南緯80度線。
  • 主要機関: アルフレッド・ウェゲナー研究所(AWI)、TROPOS、マックス・プランク化学研究所(MPIC)。
  • 使用航空機: Polar 6(Basler BT-67)。
  • 基幹技術: T-Bird曳航式プローブ、ライダー、レーダー、CCN/INPセンサー。
  • 発見: 南極内陸部における予想外に高いエアロゾル濃度。
Mattias Risberg

Mattias Risberg

Cologne-based science & technology reporter tracking semiconductors, space policy and data-driven investigations.

University of Cologne (Universität zu Köln) • Cologne, Germany

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Readers Questions Answered

Q 南極の雲はなぜ20年もの間、研究されてこなかったのでしょうか?
A 南極の雲において、これと同等の航空機によるエアロゾル観測が20年間行われてこなかったのは、前回のキャンペーンが沿岸地域のエアロゾルの空間分布のみに焦点を当てていたためです。一方、最近のSANATキャンペーンは、最新の技術を用いて南極平原の深部まで調査を広げています。この空白期間により、雲の形成プロセスやエアロゾルの相互作用、そして気候システムにおけるそれらの役割についての理解が制限されてきました。ノイマイヤー第III基地からのSANAT飛行は、南極平原上空での初の本格的な観測となります。
Q 海氷の減少と雲の形成にはどのような関係がありますか?
A 2016年以降、記録的な低水準が観測されている南極の海氷減少は、海洋の温暖化と関連しており、それが大気の相互作用を変化させ、雲の形成に影響を与える可能性があります。近年の研究では直接的な関連性の詳細は示されていませんが、海氷の減少によって海面がより広く露出することで、水蒸気の供給量や雲の核となるエアロゾルの生成に影響を及ぼします。氷の表面を覆う雲は太陽放射を反射するため、こうした変化の中にあって南極のアルベド(反射率)と気候調節において重要な役割を果たしています。
Q ペンギンの排泄物は南極の雲にどのような影響を与えますか?
A ペンギンの排泄物が南極の雲の形成に直接関与しているという信頼できる証拠はありません。ペンギンは糞(グアノ)を通じてアンモニアを排出するため、それが大気中のエアロゾルに寄与する可能性はありますが、南極の雲やSANATキャンペーンに関する研究では言及されていません。雲形成の研究は、野生動物による生物学的排出ではなく、南極平原上空の自然起源および大気起源のエアロゾルに焦点を当てています。

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