NASAは、2029年に接近する小惑星アポフィスへの対応に向けたハードウェア問題を、既存の探査機OSIRIS-APEXのプログラムを書き換え、接近する岩石に向けるという単純な方法で解決した。一方、欧州のエンジニアたちは、世界的な半導体供給の順番待ちという壁に突き当たっている。彼らは、地球の重力が小惑星表面で地滑りを引き起こすかどうかを測定するための耐放射線センサーを必要としているが、そのために必要な特注シリコンの完成には程遠い状況にある。
この接近観測は、惑星防衛における根本的な問い、すなわち「アポフィスは固い岩塊なのか、それとも微弱な重力で結びついた緩い『ラブルパイル(瓦礫の集積体)』なのか」という疑問に答えることを目的としている。しかし皮肉なことに、このミッションは図らずも欧州の産業政策に対する公開監査の場となってしまった。小惑星を分析するための計算アーキテクチャは完璧に設計されているものの、物理的なハードウェアは調達のボトルネックに阻まれたままだ。
耐放射線部品の行列
小惑星の微妙な表面変化を監視するには、極端な温度変化と深宇宙の放射線に耐えうる観測機器が必要となる。市販の汎用半導体では対応できない。このミッションには、高感度かつ特殊な製造技術が必要であり、半導体工場(ファブ)が土壇場で急いで製造できるような代物ではない。
欧州が掲げる戦略的自律への取り組みが計画通りに機能していれば、これらの重要なコンポーネントはドレスデンやグルノーブルの製造ラインから出荷されているはずだった。しかし現実は、欧州の航空宇宙企業は分断されたサプライチェーンの対応に追われている。欧州の観測機器を開発するエンジニアたちによれば、設計自体は完了しているものの、物理的なインターフェース部品の製造枠の確保に数年待ちの状態が続いているという。
天体力学との交渉
これこそ、ブリュッセルが推進する産業戦略が解消を目指していた脆弱性に他ならない。EUを通じて宇宙開発プログラムに資金を提供することは、しばしば迅速なハードウェア調達を極めて困難にする行政上の制約を伴う。アクティブな探査機を転用するNASAの俊敏性は、業界のスピードに追いつくのに苦慮する(EUの)調達サイクルとは対照的である。
根本的な問題は、EUの調達サイクルが2029年という絶対的な軌道上の締め切りを、交渉可能なインフラの一部のように扱っていることにある。天体力学には延長という概念は存在しない。
欧州には惑星防衛を主導する工学的な才能も政治的な責務もある。ただ、岩石が実際に到達する前にシリコンを調達する方法をまだ見いだせていないだけなのだ。
出典
- NASA ジェット推進研究所(JPL)地球近傍天体研究センター
- 欧州宇宙機関(ESA)惑星防衛オフィス
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