天体物理学者は今、巨大な難問に直面している。宇宙の膨張速度が「計算と合わない」のだ。科学者が初期宇宙の膨張率を測定すると、現代の観測データとどうしても数値が一致しない。
現代の数学が根本的に間違っているか、あるいは時空の構造を歪めている未知の動的な力が存在しているかのどちらかである。どちらが正しいのかを突き止めるため、NASAは巨大な光学観測装置を地球から100万マイル離れた観測地点へと送り込む。
2026年4月までにSpaceXのFalcon Heavyロケットでの打ち上げが予定されている「Nancy Grace Roman Space Telescope(ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡)」は、数億個におよぶ銀河の位置をマッピングするために建造された。もしミッションの科学者たちが予測する通りの発見があれば、私たちは物理法則の書き換えを余儀なくされるだろう。
宇宙膨張率をめぐる危機
この核心的な対立は、「ハッブル定数」と呼ばれる指標にある。本来、この数値は宇宙がどれほどの速さで膨張しているかを正確に示すはずのものだが、既存のデータはこの数値と一貫性を示さない。
NASAのRomanプロジェクトのシニア・プロジェクト・サイエンティストであるJulie McEnery氏は、この望遠鏡がまさにこの明白な不一致を調査するために設計されたと指摘する。数十億年にわたる宇宙のウェブをマッピングすることで、Romanはダークエネルギーが静的な背景放射のような力なのか、それとも時間とともに変化する動的な場なのかを追跡することになる。
これを実現するため、この観測所は直径2.4メートルの主鏡を採用している。これは由緒あるHubble宇宙望遠鏡に搭載されているものと全く同じサイズだ。しかし、RomanにはHubbleの赤外線カメラの100倍の視野を一度の撮影で捉えることができる「Wide Field Instrument」が搭載されている。
暗闇の小さな一角を凝視するのではなく、Romanは大規模な銀河の国勢調査を行う。数十億個の星々の動きをカタログ化し、Ia型超新星を監視することで、時空の微妙な伸縮を追跡するのだ。
スナイパーと測量士
NASAはすでに、太陽と地球のラグランジュ点(L2)に巨大な赤外線望遠鏡を配置している。James Webb Space Telescope(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)だ。しかし、これら2つの機械は全く異なる目的のために作られている。
NASAの関係者は、Webbをスナイパーに、Romanを測量士に例える。Webbは宇宙の最初の光を見つめ、極めて狭い領域で微細な詳細を捉える。一方、Romanは巨大な網を投げ、Webbがその後で詳細に調査できるような希少な天体や原始銀河を発見する役割を担う。
これほど短時間で広大な空をカバーできるため、Romanは膨大な量のデータを生成することになる。NASAのGoddard Space Flight Centerでプロジェクトマネージャーを務めるJamie Dunn氏は、この望遠鏡が実質的に深宇宙の連続的な高精細ムービーを地球に送信することになると述べている。
10億分の1の輝きを遮る
ダークエネルギーのマッピングに加え、Romanは岩石質の地球型惑星を探すよう設計されている。これを実現するのが「重力マイクロレンズ効果」だ。これは、手前にある星の重力が、はるか後ろにある星の光に対して巨大な虫眼鏡のような役割を果たすという物理学的な現象である。
もしその手前の星を公転する惑星が存在すれば、光にわずかな特徴的なブレが生じる。これにより、天文学者は現在の系外惑星カタログで「盲点」となっている、太陽系と同程度の距離を公転する惑星を見つけることができるようになる。
また、同望遠鏡には非常に実験的なコロナグラフも搭載されている。この装置は、主星の輝きを物理的に10億分の1まで遮断し、公転するガスジャイアント(巨大ガス惑星)が反射する非常に微かな光を捉えるように設計されている。
もしこのコロナグラフが機能すれば、遠方の系外惑星で生命の化学的兆候を探す将来のミッション「Habitable Worlds Observatory(居住可能世界観測所)」にとって、不可欠な概念実証となるはずだ。
フラッグシップの呪いを打ち破る
大型宇宙観測所は、何十年もの遅延と数十億ドル規模のコスト超過に悩まされることが常であった。しかし、Romanは現在、スケジュールを前倒しで打ち上げ時期を迎える順調な軌道に乗っている。
NASAのScience Mission Directorate(科学ミッション局)の責任者であるNicky Fox氏は、厳格な「設計段階からのコスト管理」と安定した資金提供が、フラッグシップ級の建造につきものの開発の悪夢を回避した要因であると評価している。
このミッションの名前は、NASAの初代天文学チーフであるNancy Grace Romanに由来する。「ハッブルの母」として広く知られる彼女は、1960年代から70年代にかけて、初期の大型望遠鏡を実現させるために奔走した。50年後の今、彼女の名を冠した望遠鏡が、宇宙の真の構成要素を解き明かすかもしれない。
出典
- NASA Goddard Space Flight Center
- NASA Science Mission Directorate
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